小説・日本参戦7

 翌日の日米安保論の授業は、紛糾したといっていい。柴田教授は、強固な日米全保障条約反対論者だったからだ。学生たちから、吊るし上げになったといっても過言ではなかった。教授は、しどろもどろになって自論を述べ、早々に、授業を切り上げた。誰かがいった「あいつこそ、非国民だな。日本を愛していないんだ」

 大輔は聡介と、また、DOUTORへ行き、モーニングセットを頼んだ。

 大輔は「本当にやるかな」といった。聡介が「まず間違いないだろう。台湾は膠着状態だしな。習近平は日本が欲しいんだ」

 その夜、真理子がやって来た。何時もなら、夕飯を食べ、二人はベッドを共にしていたが、この日は違っていた。真理子が、異変に気付いた。

 「大ちゃん、どうしちゃったのよ」「もし、俺が戦争に行く、といったらどうする?」真理子の目からみるみる涙が流れた。そうして、意を決したようにいった。

「私、あなたと結婚する。そうして、子供を作って名づけるわ。大輔って」

 彼は、大声で笑った。「もし、生きて帰ったら、大輔が二人になっちゃうじゃあないか」「その時はその時、改名すればいいのよ」

彼は、この時ほど真理子を愛したことはないと思った。