小説・日本参戦1

202x年、3月の終わり、まだ桜が散る前、人々が酔いしれているときの事だった。各地で花見が開かれ、ひとびとはその美しさに酔いしれていた。そんな時、事が起こったのである。突然、中国人民軍が台湾に侵攻した。中国の国家主席習近平自身は広言こそしていなかったが、台湾の民主化勢力とアメリカ寄りの姿勢が苛立ちの極致に達してたのは間違いなかった。中国国内でさえ民主化勢力をとことん弾圧してきた過去がある。

 大学二年生の政経学部に通う元木大輔は、自分のアパートに通う同大学の文学部に在籍する江碕真理子との昨夜のセックスを、今二人は全裸のまま布団にくるまっていた。うとうととした半覚醒で大輔は思った。「こいつはどんどん淫乱になってくるな」

 夕べの12時過ぎから始まったセックスは明け方近くまで及んだ。

 「今日は、朝一から授業があるのに。いっそ休んでしまうか」とも考えたが政治家になるという野心を持つ大輔は、ようやくベッドから這い出てシャーを浴びに行った。入念に体を洗って衣服を整いても、真理子は起きる気配がない。

 「おい」といって揺り起こすと目を開けた。のろのろと体を起こしてベッドを出て風呂場に向かう。大輔は煙草を横ぐわえにするとテレビをつけた。彼はNHKしか見ない。それは、ほかのテレビより信頼していることもある。他の局ではいい加減な取材や憶測に下づくワイドショーの要素が多いからだ。

 だがテレビをつけた途端、大輔の目は画面に釘付けになった。アナウンサーは冷静を装っていたが、口調がいつもと違っていた。よほどショックなニュースなのだろう。アナウンサンサーいった。

 「繰り返します。本日、中国軍は台湾北部に侵攻しました」しんこうという言葉が、大輔の中でにわかには漢字に変換されるまで時間がかかった。そうして、そうして、ようやく侵攻という漢字となって実を結んだ。侵攻?。なぜ?。彼の中にさまざまな言葉が渦巻く。戦争、ウクライナイスラエルパレスチナ

 そうしてそのアナウンサーの言葉からやや時を置いて冷静さを取り戻した。政治学部の自分を取り戻して考え始めた」。中国が台湾に侵攻したということは、まずは、台湾軍が対応するだろう、その台湾の苦衷に、日本が無視できるだろうか。これは、民主主義の危機でもある。自衛隊が、即、出動ということにはならないが、親台湾の勢力が少なくない日本人が黙っているだろうか。多くの企業が台湾との取引している。特に半導体の分野では台湾が中国をリードしていた。その企業がそう易々と台湾を見捨てることはない。それより政治家が無視できないのは世論の動向だ。誤ると、与党の瓦解にもつながりかねない。そこで、その日のうちに、首相は、まずは記者会見を開き、中国を非難したうえで、即刻、台湾から撤退するように求める。

 そうして、これは、民衆主義をないがしろにする行為であるばかりだ、そうして、アメリカ大統領と電話会談を開いたことを明らかにし、大統領も同意見であったことを表明する。つまり、中国を牽制するのだ。

 そのうえで中国の対応を待つ。

 風呂場から出てきた出てきた真理子に大輔は驚きの声でニュースの内容を話した。真理子はぽかんとした顔をしていた。文学部なら無理もない。事の重大性が理解できていないのだ。

 「おい、しっかりしろよ。事と次第によったら、日本が戦争に巻き込まれるかもしれないんだぞ」

 真理子は無邪気な目をして「私戦争は嫌だな」といった。「それより、おなかが減った。大輔、何か食べに行こうよ」大輔は全く腹が空いていなかった。

 私たちは、近くのDOUTORへ行き、モーニングセットを食べて別れた。彼女の授業は、午後からだという。大輔は大学に向かい教室に入った。