小説・日本参戦15

いくら、日米安保条約が発動されたとはいえ、自衛隊として手を拱いているわけにはいかない。このままでは、東京が危ない。首相は、宮中に参内し、天皇陛下に安全な場所、例えば、北海道や京都へ避難することを申し出た。

 しかし、陛下はこういったのである。「わたくしは、日本国民とともにある。国民の皆さんはほかに逃げる場がないではありませんか。わたくしは皇居を離れるつもりはありません」

 これは、宮内庁の内部からリークされた。

 翌日の、テレビ、新聞で、この陛下の発言は大々的に報じられた。このお言葉は、国民の意識を一変させた。それまで、親中を表明していた政治家や、財界人、一般の人までも心をひとつにする効果があった。あの、赤旗新聞でさえ例外ではなかった。