池波正太郎の鬼平犯科帳

私の家にはテレビがない。だから、テレビで鬼平犯科帳のシリーズが新しく始まっているのか、これからなのか判然としない。だが、故・池波正太郎の「鬼平犯科帳」は全巻読んでいる。

 これがなかなか面白い。主人公は火付盗賊改め(現在であれば強硬犯にあたる)の長官、長谷川平蔵だ。これが、従来の時代小説と決定的に違うのは、平蔵は、決してその場で犯人を切らず、十手で捕りおさえるところだ。だから、中には平蔵の、いわば温情にほだされ、間諜になるものも登場する。その他にも旨そうな料理も出てくる。「とり鐵」の軍鶏鍋などはその典型だろう。

 池波正太郎は食通でもよく知られている。それが作品の中でも存分に生かされているのだ。

 話は飛ぶが、板橋福祉事務所の私の担当が代わった。その名は何と長谷川。福祉事務所では、下の名は名乗らない。今まで担当の名がなかなか出てこなくて苦労することもあったが、これからは決して忘れないだろう。女性だから、下の名が平蔵であることはあるまいが。